気候変動への対応

当社グループでは、国内及び中国に原薬・製剤の製造工場を有しています。今後も生産拡大を図っていく方針ですが、昨今の気候変動問題の深刻化に伴い、各国でのGHG排出規制の強化等が想定されるため、GHG排出量の削減や省エネルギー対応の強化が必要であると考えています。一昨年より、網羅性・適切性を踏まえた当社グループ全体での「GHG排出量、エネルギー使用量」の集計体制の構築を進めてきており、2023年5月期からはScope3排出量(サプライチェーン上のGHG間接排出量)の算定も開始しました。今後、長期的な目標を策定し、GHG排出量削減の取組みを強化していく方針です。

[ 2023年5月期の取組み内容 ]

(1) 省エネルギー・GHG排出量削減への主な取組み(2023年5月期実績)

国内外での事業の拡大に伴い、エネルギー使用量及びGHG排出量が増加傾向にあります。これらの増加を少しでも抑え、近い将来の削減に繋げられるよう、2023年5月期は以下のような取組みを行いました。

  • 太陽光パネルの設置(詳細は下記参照)
  • 空調設備の室外機への冷却水噴霧による電力使用量の削減
  • 廃プラ等の廃棄物リサイクル化(熱源としての再利用)

Topic 太陽光パネルの設置について

当社では、省エネルギー、GHG排出量削減策の一環として、「太陽光パネル」の設置を行うことを決定し、2022年2月~11月にかけて設置工事を行いました。詳細内容は以下のとおりです。

  • *設置場所:ダイト本社敷地内の各工場・物流センター等の屋上
  • *パネル容量:366kW
  • *年間発電量(見込み):約385,000 kWh
  • *GHG削減量/年(見込み):約190 t-CO2
  • *発電実績(2022年12月~2023年5月):187,541kWh
太陽光パネルの設置について

(2) Scope3排出量の算定(ダイト単体)

昨今、企業自らのGHG排出量の削減のみならず、事業活動を行う上での調達、製造、販売、廃棄といった一連のサプライチェーン全体を通じたGHG排出量の削減を求める動きが強まっていると認識しています。こうした中で、当社では、昨年より、過年度の財務データ等を用いたScope3排出量の概算値の算出を試みてきました。
今般、Scope3の15のカテゴリにつき、算定対象カテゴリの特定と算定方針の決定を行い、ダイト単体に関して、2023年5月期のScope3排出量の算定を行いました。
算定結果及びカテゴリ別の算定基準は、下表に示すとおりです。

Scope3排出量(2023年5月期 ダイト単体)

カテゴリ GHG排出量(t-CO2 割合(%)
1 購入した製品・サービス 100,069 78.0
2 資本財 20,325 15.8

3 Scope1、2に含まれない
燃料及びエネルギー活動

3,644 2.8
5 事業から出る廃棄物 4,145 3.2
6 出張 52 0.04
7 雇用者の通勤 90 0.07
合計: 128,325 100.0

(注) カテゴリ4は、現在算定に向けた検討を進めています。

カテゴリ別の算定基準

カテゴリ 算定方法 及び 排出原単位
1 購入した製品・サービス 算定対象範囲はダイト株式会社単体のみとして、年間購入額上位90%のサプライヤーから調達した原材料について算出
〔算定式〕:
Σ{(購入・取得した製品またはサービスの物量または金額データ × 排出原単位)}
排出原単位(物量)は、「IDEAv2.3(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)」に基づく値を採用
排出原単位(金額)は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース Ver.3.3 2023年3月」に基づく値を採用
2 資本財 建設・製造が終了した資本財の価格に、価格当たり排出原単位を乗じて算出
排出原単位は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース Ver.3.3 2023年3月」に基づく値を採用

3 Scope1、2に含まれない
燃料及びエネルギー活動

電力、都市ガス、LPGの使用量に排出原単位を乗じて算出
排出原単位は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース Ver.3.3 2023年3月」に基づく値を採用
5 事業から出る廃棄物 廃棄物の種類・処理方法別の排出量に、排出原単位(廃棄物輸送段階含む)を乗じて算出
排出原単位は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース Ver.3.3 2023年3月」に基づく値を採用
6 出張 移動手段別の交通費支給額に排出原単位を乗じて算出
排出原単位は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース Ver.3.3 2023年3月」に基づく値を採用
7 雇用者の通勤 移動手段別に算出した排出量の合計。移動手段別の排出量の算出方法は以下のとおり。
電車通勤: 旅客数に旅客移動距離を乗じた旅客キロに排出原単位を乗じて算出
自動車通勤:輸送距離を燃費で除した値に排出原単位を乗じて算出
排出原単位は、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース Ver.3.3 2023年3月」に基づく値を採用

今後のGHG排出量削減への計画

現時点ではGHG排出量の長期的な削減計画は未策定ですが、今後、基準年を定めた上で、2030年や2050年までの削減目標を確立し、GHG排出量削減の取組みを強化していく方針です。削減案としては、省エネルギー設備への転換のほか、再生可能エネルギーの購入や、CO2クレジットの利用などを考慮しています。また、サステナブル調達の徹底を通じて、Scope3排出量の削減も図っていきたいと考えています。

エネルギー使用量の推移(GJ)

エネルギー使用量の推移(GJ)

集計概要

  • 算定方法:
    1. エネルギー使用量:電気購入量と燃料使用量の合計(熱量換算)
    2. 熱量換算係数は「エネルギー使用の合理化に関する法律施行規則」による
  • 集計範囲:
    グラフの項目名に「(単体)」の表記があるものはダイト単体。「(連結)」の表記があるものはダイト単体と連結子会社の合計。
  • 集計期間:4月~3月

GHG排出量の推移(t-CO2

GHG排出量の推移(t-CO2)

集計概要

  • 算定方法:
    1. Scope1:化石燃料等の使用による事業所からの直接排出(2021年5月期よりフロン類含む)
    2. Scope2:外部から購入した電気の使用による間接排出
    3. 排出係数:
      電気:(国内)温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度の電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)の調整後排出係数を使用
      (海外)現地調査結果に基づく排出係数を使用
      電気以外:環境省・経済産業省「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」による。(2023年5月期はVer.4.9)
  • 集計範囲:
    グラフの項目名に「(単体)」の表記があるものはダイト単体。「(連結)」の表記があるものはダイト単体と連結子会社の合計。
  • 集計期間:4月~3月

水資源に関する管理活動の推進

今後、事業拡大を図っていく中で、国内外の生産拡大に排水処理能力の増強が追い付かず、水質汚染が発生するリスクや、国内外の生産拠点で取水制限等による水不足が発生し生産計画が遅延するリスクなどが想定されます。こうしたリスクを低減するため、取水量の削減や排水の水質管理強化を図っていくことが必要であると考えています。2023年5月期の主な取組み内容は以下のとおりです。

取水量の削減

(1) 地下水取水量の集計精度向上(実測集計対象範囲の拡大)

従来は、当社で使用する地下水のうち、「融雪用」の井戸ポンプには流量計を設置しておらず、電力使用量から地下水取水量を推計していました。集計精度向上を図るため、2021年12月以降、順次流量計を設置し、実測値を集計できるようにしており、2023年5月に全ての設置が完了しました。

(2) 取水量削減策の実施・計画

地下水取水量の削減策として、以下のとおり「地下水の循環利用」を計画し進めています。

① 当社の第六製剤棟、第五製剤棟において、空調機の冷却(予冷)に用いた地下水を地下水ピットに戻して再利用することにより、使用量の削減を計画しています。

第六製剤棟:本件の工事は2022年7月に完了しました。これに伴う2022年8月~2023年5月の地下水使用量の削減実績は、約20,000m3です。

第五製剤棟:本件の工事は2023年5月に完了しました。これにより、約10,000m3/年の使用量削減が見込まれます。

② 当社の原薬製造部においては、生産設備の冷却水として使用している地下水の再利用方法を検討、または一部実施しており、今後の更なる使用量削減に向けて、検討を継続していきます。

取水量の推移(千m3

取水量の推移(千㎥)

集計概要

  • 算定基準:
    上水取水量:上水(市水)の購入量
    地下水取水量:集計範囲組織での地下水揚水量(2021年5月期より融雪用地下水を含む)
  • 集計範囲:
    グラフの項目名に「(単体)」の表記があるものはダイト単体。「(連結)」の表記があるものはダイト単体と連結子会社の合計。
  • 集計期間:4月~3月